揮発性

なんにも残らない

プリンスアイスワールド2018横浜公演に行ったらあまりのエモさに泣いた

(ネタバレしかない)
(視点が南側だったり東側だったりバラバラです)
(2回見ただけだと全員見られないしどこかしら抜けや漏れや間違いがあると思いますごめんなさい)



 今年のプリンスアイスワールドは、2年ぶりに横浜公演の初演を観に行った。28日と29日の公演を見て帰ってきて1週間経って、まだぼんやりと興奮している。
 40周年を迎えるPIWが掲げたタイトルは「ROAD OF THE ICE」。発表されたとき、「(去年までと比べて)ちょっとイメージしづらいな」と言うのが正直なところで、あまり予想や想像をせずに会場に向かった。ところが現地に着いてすぐ「あ、今年はやばいかも」という予感がした。スケーターの出入り口には、去年までと違い大きな幕が張られ、フェンス全体にLEDがびっしり敷き詰められている。ペンライトは星型だし、そして何よりパンフレットが分厚い!ゲストよりチームメンバーが先に載っていて、しかも1人につき1ページ割り当てられている*1。運営側も相当気合いが入っている。そして客電が落ち本番が始まると、この予感は確信に変わる。今年のPIWはやばい。



 The Way You Look Tonight
 Time Check
 Let Me Entertain You
 恒例のチームメンバー紹介から。松永幸恵さんから一人ずつ、リンクに飛び出してくる。まず衣装が最高だった。なんと全員、上下真っ白な燕尾服とシルクハット!思わず声が出た。記念すべき40周年は王道中の王道、ブロードウェイのショーのような、とことん正統派で攻めてきた。北側のスクリーンもカジノ街のようなネオンが光って、とってもとってもゴージャス。去年お休みしていた松村成さん、伊藤高菜さんが出てきたときは、会場の拍手も「おかえり!」という気持ちがこもっていて、胸がいっぱいになる。
 その後は後半ゲストの紹介パート。一人紹介するたびに、フェンスのLEDにゲストの名前が浮かぶ。安藤美姫さん、田中刑事さん、村上佳菜子さん、織田信成さん、町田樹さん*2
 Let Me~では、チームメンバーが燕尾の上着を脱いでカラフルなラメのベスト。終盤「Come on Come on~」で観客を煽る場面、ちょうど正面に1年生の本田宏樹さんが。とても緊張していて初々しい…!本番中に言葉をかけるわけにもいかないので「こちらはとても楽しんでるよ~!大丈夫大丈夫~!」という気持ちをニコニコしながら表情で伝えるようにしているけれど、プロスケーターデビューの初演で緊張するなと言う方が無理な話である。広島公演では思い切ってふれあいタイムで声をかけたいと思う。日頃はスケート靴のブレードを研磨するショップスタッフ、衣装に着替えたらプロスケーターってめっちゃかっこよくないですか。スーパーマンみたいだ。

 ゲストコーナーその1
 友野一希選手の新しいプログラムはPentatonixのDaft Punkメドレー!トーマのような横長のサングラスに、シルバー衣装の近未来チックな出で立ち、ロボットダンスにトリプルアクセル。これは絶対佐藤操先生に違いない!と思っていたら、やっぱりそうらしい*3。彼らのような直線的な音楽に、弧を描くフィギュアスケートを合わせるのは難しそうだなと個人的に思っていたけれど、ヒトの声だけで構成されたアカペラを用いることで、エレクトロでも人間味というか、彼の個性がしっかり出ていて、とても楽しかった。磯崎大介さんがThe Idea of NorthのMas Que Nadaで滑った時も思ったけれど、アカペラでフィギュアスケート、どんどん増えてほしい。
 本田真凜選手はCarly Rae JepsenのI Really Like You。これはとびきりかわいい女の子じゃないとできないやつ!そしてそれができるのが本田真凜なのだなと思う。ふわふわとした軽やかな滑り、奇を衒いすぎないストレートな表現が、歌詞の中に出てくる等身大の女の子そのもののようで、会場のあちこちから声にならない「かわいいー!」が聞こえてきそう。何回かわいいって書くんだって言われそうだけど、本当にかわいい存在を見ると人間は語彙を無くす。
 悔しい想いをたくさんしたであろう五輪シーズンを終え、練習拠点も変えて、少しさっぱりしたような表情が印象的だった。思い切り目を合わせてニコっとされて、いい歳した大人がはしゃいでしまった。

 New Year's Day
 Right Place Right Time
 チェックのシャツやボトムス、ニット帽にTシャツといったカジュアルなコスチュームが、青春群像劇のミュージカルのよう。みんなかわいいんだけど、特に坪田佳子さんの赤いベレーと黒いニット、赤チェックのスカートが彼女にとても似合っていて釘付けになってしまった。全編通して言えることだが、小柄な身体にあのエネルギーは一体どこから来るのだろう。幸恵さんのヘアカッターが美しい。
 ここで1回目の氷上椅子のコーナー。乗せるお客さんを探すために近くに中島将貴さんが来たけれど、本当に2年目?実は6年目だよね?ってくらいノリノリで、小さな女の子を連れて行った。

 What Are Words
 去年に引き続き、Peter Hollensがいる。今村ねずみさんの趣味だろうか。ミントグリーンに白いチュールが重なった衣装がとても綺麗。男子も同じ素材で、2年前の「糸」に似た、袖が長い形。スクリーンには宇宙が映し出されていた。
 今回初めて小平渓介さんの滑りを見たのだけれど、タイムラインで時折彼が話題になる理由が分かった。肩甲骨からぐいっと回るような腕の動きや、繊細な手首の使い方、すんごく好きなタイプのスケーターだった。地方大会やインカレのレポで必ず話題に上がっても、頻繁に東日本へ行けない身としては、本当にチームに入ってくれてうれしい。

 Be Lonely
 スーツ男子のプログラムかと思いきや、奥から出てきたもう一人は小塚崇彦さん!そう!これ!こういうのが見たかった!2014年、チーム群舞の終盤にゲストがパッと登場して、そのままゲストコーナーへ…みたいな演出はあったけれど、こういうがっつり一緒に作った作品が見てみたかった。パニエがどっさり仕込まれた女の子の衣装は正義。イタリア男のちょっと気障なプログラムで、最後に自分のエッジについた氷を投げて、小塚さんが投げキッスをして終わる。時折「推しがエッジで削った氷を食べたい」とのたまうスケオタがいるけど、まさか投げられるとは思うまい。

 I Bet My Life
 「地上の星」系のゴリゴリかっこいいプログラム。迷彩のツナギ(女子は無地だったかな)に、白いステンシルで「PIW」と入っている。PIWはこういうプログラムも女子ががっつり入ってくるので大好き。

 Smile
 この曲にゴールドの衣装という組み合わせを見ると*4浅田真央さんを思い出さずにはいられない。去年引退した彼女へのオマージュかな、と思いながら見てしまった。

 ゲストコーナーその2
 樋口新葉選手のマイケルジャクソンメドレー。とっても楽しみにしていたけれど想像以上にかっこいい!若くて小柄な女の子が、革張りシートのゴツくて古い外車に気取って乗ってるのが見える。ムーンウォークが南から北までたっぷり入っていて見ごたえがあるし、グッと重心を低くしてぐいぐい滑っていく振付が彼女にとても似合う。リニアモーターカーみたい*5
 五輪シーズン、新葉ちゃんのSPとFSが本当に本当に大好きで、1シーズンでとんでもないマスターピースが2つも爆誕したと思っていたのに、彼女は一体どれだけ可能性を秘めてるのだろう。底が見えない。
 本田武史さんは曲名が分からなかったけれど、スピード感とスケーティングをたっぷり楽しむことができるプログラム。イーグルのときの観客の「待ってました!」な盛り上がりが最早様式美になっていて好き。本田さんはふれあいタイムのときサッとはけてしまうことが多いけれど、こういうところで観客ときっちりコミュニケーションしてるんだと思う。それにしてもコーチして解説して家電芸人してお父さんで、一体いつ新しいプログラム作って練習されているのだろうか。

 Don't Stop Me Now
 町田ファンが思わず反応してしまうドンストの歌いだし。あのピンクの衣装は大好きだけど、あの衣装で電車みたいに連なって滑ってるのをみると2年前のChoo Choo Trainを思い出してしまい、嗚呼あの人もあの人も本当に卒業されたのだな…と少し寂しくなってしまうのは内緒。



 The Greatest Show
 This Is Me
 Rewrite The Stars
 後半にとんでもないのぶっこんできたPIW。
 小林宏一さんが、ヒュー・ジャックマン演じるバーナムのような真っ赤な衣装にシルクハットで現れる。サーカス団の座長だ。そして団員たちが、カラフルな衣装で登場する。
 女子キャプテンの田守由英さんは異国情緒あふれる踊り子のようなコスチュームで、セクシーだけど持ち前のヘルシーな笑顔で下品じゃないし、浅見琴葉さんが近くでしゃがんでいたけれど、つけまつげ一つとっても細部までこだわっててかわいい!みんな個性たっぷりな衣装で、喩えではなく本当に目が足りない。1回2回じゃみんなの衣装が覚えきれない。色、素材、サイズ、露出、メイク、アクセサリー、過剰なほどにデコラティブでチグハグで、最早悪趣味なのではと思うほど*6
 踊り子、歌姫、力自慢、道化師に猫娘、いかにもワケありな団員と、それをまとめる座長が、「さあ後半の始まりだ!」「見ろ!」「俺たちの出番だ!」と言わんばかりの力強い滑りを見せる。鳥肌が止まらない。ちょうど私の正面にドピンクのジャケットの小川真理恵さんがいて、いつも微笑んで優雅に滑っている真理恵さんが鬼気迫る表情で踊り狂う様子に目が離せない。そしてそれがめちゃめちゃ美しい。
 ゴージャスな揃いの白燕尾がショービズの「王道」だとすれば、これは「邪道」だと思う。でも、どちらも「正しい」とも思う。どちらにも演者としての矜持を感じ取ることができたなら、それはショーとして正しく、正義だと思った。私は映画「The Greatest Showman」は見ていない。それでも、この2つのまったく異なるオープニングを見せられて、私は泣いてしまった。
 This Is Meでは安藤美姫さんの振付で彼女が合流する。初めてこの曲を耳にしたけれど、「This Is Me」というフレーズに合わせてトントンと胸を叩く仕草がこんなに似合う人、他に居ないだろう、そう思って終演後に歌詞を検索したらまた泣いた。凡庸な表現だけど、自分もまた頑張ろう、ライトに照らされる彼女の姿を見て思う。

 ゲストコーナーその3
 田中刑事選手の椿姫!みんな大好き椿姫!私が最後に見たのはおそらく2014全日本だと思う。また見られるとは思っていなかったので、あの紫の衣装が見えた瞬間、隣に座っていた同行者をバンバン殴ってしまった。大好きなプログラムではあるものの、あれから3年以上経って、五輪や世界選手権を経験した彼の表現は、もうこのプログラムに収まりきらないようにも感じた。スケーターが昔のプログラムを滑ってくれるとき、こういう印象を受けることがしばしばあって、子どもが大きくなるにつれて服のサイズが合わなくなっていくような、成長は嬉しいけど寂しい、みたいな気持ちになる。
 村上佳菜子さんも正確なタイトルは分からないけれど*7、後半はジャンピンジャック。彼女にぴったりな元気でコケティッシュなプログラム。引退以降たくさんのテレビのお仕事をこなして、スケートファンでなくても毎日のようにテレビで見かけるようになったけれど、やっぱり氷の上の佳菜子ちゃんは特別輝いている。たくさんの人に見られるようになってますます素敵な女性になっていくし、両方のお仕事がお互いにいい方向に作用していったらいいなと思った。

 Begin Again
 シンプルな真っ赤なドレスだからこそ、滑りそのものや細かい身体の動きに目が行くプログラム。今回のPIWは、3~4人の少人数のプログラムがほとんどなくて、どの曲も少なくても7~8人は出てる。チームのメンバーほぼほぼ出ずっぱりで体力的にも衣装替え的にもかなり大変そう。

 The Show Must Go On
 全員素敵なんだけど、とにかく松永幸恵さん。彼女の美にひれ伏すしかない。美しい。そして強い。それに尽きる。

 We Are The World
 2回目の氷上椅子、そしてキッズスケーターのコーナー。衣装は2016年のお花プリントのもの。今回のアテンド役は小平くんで、お客さんに「お願いします!」とストレートにお願いしていたのが初々しくて可愛らしい。ねるとんみたいだった*8。そしてそれを中島くんがしっかりサポートしていて、やはり本当に2年目?と思ってしまうほど頼れる先輩だった。というか今年の中島くんイキイキしててほんとかっこいいです。目で追ってしまう。

 Story Of My Life
 真っ白い衣装、真っ白いピンスポ。スクリーンには、やはりこれも白い字で「Story Of My Life」が一画ずつ浮かび上がっていく。シンクロももちろん素晴らしいけれど、メンバー一人ひとりが、滑った軌跡を指でなぞるような振付が好きだ。それが今まで自分が歩いてきた(滑ってきた)道を振り返っているようで胸にグッとくる。生まれた街も、年齢も、選手時代にやっていたカテゴリーも違うメンバーたちが、冬の終わりとともに集まって、一つのチームとして活動してくれている奇跡に感謝したくなる。

 ゲストコーナーその4
 織田信成さんはL-O-V-E。「織田くーん!」の人、初演にいました。サビの腕の動きが「L」「O」「V」を模しているのがお洒落。今回のショー、織田くんはオープニングからフィナーレまで、3Aやら両手タノの3Loやらをばんばん挑戦していてぶったまげるし、あの柔くて独特なぐいーん!とした滑りは見てて気持ちいい。引退とは。テレビの中の織田くんしか見たことがない人ほど彼の演技を生で見てほしいと、ショーで見るたび思ってしまう。
 そして「町田樹ボレロ」という夢が遂に叶ってしまった。ボレロについては別記事で書かせてほしい。

(2018/05/20追記 町田さんのボレロ記事書きました)

a2su.hateblo.jp

 From Now On
 これも「The Greatest Showman」サントラから。
 さっきも書いたけれど、PIWチームのメンバーは一人ひとり経歴も違うし、1年を通して1つのチームとして活動しているわけではない。ショーシーズンが終われば、全国各地へ戻って別の仕事をされている。スケートの先生やリンクのスタッフ以外にも、スケートと直接関係のないお仕事をされているメンバーもいる*9

And we will come back home
And we will come back home
home, again!

 そんなメンバーたちが、ショーの一番最後、「また戻ってこよう、この家に!」という歌詞に乗せて手を叩いているのを見ていたら、もう胸がいっぱいになってしまう。
 そして演出もエモすぎて泣いた。エモいなんて言葉で片付けてはいけないんだけど本当もうめっちゃエモい。リンクの南北にかけて、照明で一筋の光の道が作られ、さらにスクリーンにも光の道の続きが映されている。メンバーが南から北に向かって、道の上を列になって滑っていく。そしてリンク北側で、攻殻立ちみたいに横一列に並ぶのがあんまりにもカッコよすぎて!
 PIWのこれまでの歴史(リンク上の道)と、これから先(スクリーンに映るこの先の道)の間、まさに今ここにいる26人。一本道になっているけれど、今までも別の道に進んでいったメンバーが沢山いるし、この先も誰かが離れていったり新しい人が入ったりするのだろう。「ROAD OF THE ICE」はこういうことだったのか。これをエモいと言わずして何と言うのか。そうしてPIWは次の公演へ続いていく。



 私がPIWを見るようになってから、まだたったの4年しか経っていない。40年ある歴史の中の、たったの4年だ。それでも毎年毎年「今年のPIW楽しかった!」と思っているし、やっぱり今年のPIWもすごかった。あまりのエモさにしょっちゅう泣いていたので、あと何回でも見たい。とりあえず広島2公演を押えているけれど、もう全通したくなってきた。
 このあと八戸公演、滋賀大津公演、東京公演、広島公演と続くので、ちょっと興味があるという方は是非足を運んでみてほしい。行けないという方も、5月20日(日)13:30からBSジャパンで放送があるので、是非そちらを*10。何回でも言うけれど、何回言っても足りないから言う。今年のPIWはすごい。



*1:1年生は2人で1ページ。それでも去年より広い

*2:今年のオープニングの町田さんは、どっちかと言うと西寄りであまりよく見えなかった…私は2回とも東寄りだったので…

*3:ふれあいタイムで尋ねていたファンがいらしたようです

*4:男子は去年の秋のお衣装だったかな

*5:マイケルジャクソンのプログラムは数あれど、ムーンウォークやゼロ・グラヴィティっぽい動きを入れても「とってつけた」感じがして、しっくりこないなと感じることが時々ある

*6:PIWの衣装センスを考えると故意にそうしてるんだと思う

*7:途中でMaterial Girlが入ってた

*8:当の本人はねるとんなんて知らない世代だろうけど

*9:練習期間を含めればかなり長い間職場を離れることになるので、本当に大変だと思います…頭が下がります…

*10:町田樹さんの解説だよ!