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揮発性のことば

なんにも 残らない

【ネタバレ】「ゴスペラーズ坂ツアー2017"Soul Renaissance"」のセットリストに思うこと

Soul Renaissance(初回生産限定盤)(DVD付)

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 タイムラインのゴスマニアたちが参加した順に語彙を失い、うわごとのように「やばい」「しぬ」と口走る、「ゴスペラーズ坂ツアー2017"Soul Renaissance"」。先日ついに参加してきたので、お酒の勢いで思ったことを書きなぐる。
 確かにあれは「やばい」し「しぬ」。行く予定が無かった人は、悪いことは言わないので、まだチケットが買える公演に行った方がいい。

 今回の記事はMCなどには触れず、「セットリストの選曲」について私が思ったことをだらだら書いている。なのでセットリストのネタバレはしつつもライブレポらしさは無い。それでも大丈夫という方のみ「続きを読む」をクリックしてほしい。といっても私も1回しか見てないので記憶が怪しいし、全日本選手権だったら見切れB席2,500円で解放されるような端の席で、下手側のバンドメンバーがほとんど見えなかったんだけど。

 

 







































 姫路市文化センターのロビーは天井が低く、そこに下げられた案内板のフォントもどこか古ぼけていて懐かしい。私が生まれる前から地元にある科学館や、もう移転してしまった図書館と同じ匂いがした。きっとこういう建物は日本中にたくさんあって、そこにゴスが来るたびに「地元に大好きが5人が来てくれた」と喜ぶ誰かがいるのだ。

 ステージの中央に階段、最上段には大きな白い額縁が立てられている。その額縁には5人の写真を転写した大きな布が張られ、その両サイドにもLED電飾を施した額縁が2台ずつ立っている。そして椅子が2脚。
 「イントロ'17」の音源が流れ始めると、客席がどよめき暗転する。それは次第に5人の生の歌声に切り替わり、会場のテンションが上がりきったところでステージ上の照明がつく。暗転していた隙に額縁の布が取り払われていて、額縁の中から5人が登場。ユタカさんだけ椅子に座っていたか。



0 イントロ'17

1 GOSWING
2 PRINCESS☆HUG
3 暁
4 Dream Girl

5 All night & every night
6 Silent Blue
7 angel tree
8 星降る夜のシンフォニー

9 侍ゴスペラーズ
10 Recycle Love
11 永遠に -a cappella-
12 ひとり

衣装替え

13 MIDNITE SUN
14 t.4.2.
15 I LOVE YOU,BABY
16 Body Calling
17 Deja Vu

18 Let it shine
19 Hide and Seek Feat.RHYMESTER
20 Unlimited
21 Get me on
22 FRENZY

23 星屑の街
24 Liquid Sky
25 Fly me to the disco ball

En.1 reborn
En.2 誓い



 後半だと踏んでいた「Silent Blue」も「All night~」も、惜しみなく前半に持ってくる贅沢さ。ルーパーを駆使し、目の前で複雑に構築されていく「Recycle Love」と、直後の「永遠に」「ひとり」のアカペラとのギャップ。誰がこの3曲を並べようと発案したかは知らないが、ライブの度に聞く曲も新鮮に聞こえるから不思議だ。
 個人的ハイライトは、後半のメドレーから「Deja Vu」のメロウすぎる時間!シラフなのに酔ってしまいそうだった。みんなが「やばい」と言っていたのはこれか。こういうのが聞きたかったし、メドレーなんてもったいないことせずに全部フルで、どっぷり曲の世界に浸りたい。
 そんなことを考えていたら、アンコールの「reborn」で2度目の「みんながやばいって言ってたのコレか」を味わった。もう聞けないと思っていた人が大勢いたと思う。嬉しいサプライズだった。
 本編最後の「Fly me to the disco ball」がいちばん涙腺にきた。泣くような曲じゃないのに、ぼろぼろと涙が止まらなかった。サビに合わせたまっしろい照明が、明るすぎて、幸せすぎて、私は泣いた。人は幸せすぎるとその処理に困って泣くんだと知った。

 終演後、撮ったセットリストを見て驚いた。「Soul Renaissance」収録曲と直近シングルのカップリングを除くと、「Dressed up to the Nines」以降の曲がほとんど無い。「Be as One」も、「Hurray!」も「ハモリズム」も、「STEP FOR FIVE」も、1曲も入ってない。「The Gospellers Now」から「reborn」だけ。
 そして何より驚いたのは、ライブの定番曲が少なめになっていること。「1,2,3 for 5」「ギリギリSHOUT!!」「いろは」「Promise -a cappella-」等々、毎ツアーこのあたりから1曲2曲入っていてもおかしくない飛び道具が、今回はすっぱり外されていた。
 鉄板曲は嬉しい半面「またか」と思うことも正直あって、「今回アンコールでまた『Promise』か『いろは』をやったらブログにチクチク書いてしまおうか」と思っていた。だから心底「やられた!」と思ったし、なんならちょっと悔しかった。本当にごめんなさい。ファンが舐めてかかってどうすんだ。

 初めてゴスのライブを見る人は毎公演必ずいるから、ヒット曲は外せない。その一方でリピーターが喜ぶ曲も必要。ゴスペラーズのセットリストは、5人のそんな思いがひしひしと伝わってくる。ワンマンじゃないフェスでも、時間の短いイベントでも。いつもそうだ。
 ひとつ前の坂ツアーは、ファン投票で収録曲が決まったベストアルバム「G20」が中心だった。乱暴な言い方をすれば、あのツアーのセットリストを決めたのは私たちだった。
 今回の選曲は、そういった従来の観客中心のアプローチとは少し違う。Unlimited→Get me on→FRENZYという展開も、ファンが大好きな後半の盛り上がりポイントを押さえつつ、アルバム「Soul Renaissance」が持っている雰囲気からズレすぎない選曲だなあ、という印象を受けた。

 セットリストから外れた00年代後半~のオリジナルアルバムは、ソウルやR&Bをベースに、ポップス、ジャズ、ファンク、ロック、ピコピコサウンド、クラシック、合唱曲、幅広いジャンルのカラフルなものが多かった。それは音楽のルーツが異なる5人が成せる業だし、大きな強みだ*1
 ただ今回のアルバムは、ジャンルも年代も、ぐっとフォーカスを絞ったもの。今の年齢の5人が90年代のソウルに立ち返り、じっくり腰を据えて作られたアルバムで、それを中心にセットリストを組もうと思ったら、こういう流れになるのは寧ろ自然なことだと思う。

 20代だった頃の音楽に正面から向き合うことは、懐古だろうか。保守なのだろうか。答えは真逆だと思う。めちゃめちゃ攻めてる、攻めてるよゴスペラーズ。「ちょっと懐かしい感じの曲作ってみたよ」なんてノリじゃなくて、「やるからにはあの頃の自分たちを越える」という覚悟。モチベーションだってエネルギーだって必要だし、こんなにしんどいことは無い。「Soul serenade」の頃の5人が今の5人を見たら、きっと「負けてらんねえ」って悔しくなると思う。
 20周年イヤーが終わって、北山さんの休養があって、久しぶりのオリジナルアルバムと坂ツアー。5人は守りになんて入ってない。大げさではなく、今回のツアーは5人の転機、新しいチャプターの始まり予感させる。ルネッサンスの名に偽りなしのセットリストだった*2

 アンコールが終わって5人がハケた後、中央の額縁には、開演前とは違う布が張られていた。後半の真白い衣装で、階段を今もう一段上がろうとしている5人*3。これからも坂を上りつづける5人を見ていたいと思うゴールデンウィーク最後の夜だった。四十路なんてまだまだ青二才!



*1:そもそも私は2008年にファンになったクチで、むしろそんな作品群が大好きなので誤解しないでほしい

*2:しいて言えば「Let it shine」からMCなしで「Hide and Seek~」だったから、立つ曲だと分かっているのに立つタイミングが分からなくて戸惑ったよ!

*3:だったよね?興奮していて自信がないので誰かこっそり教えてください