揮発性

なんにも残らない

「前略プロフィール」とバーチャル墓参り

今週のお題「恋バナ」
※いつの間にか木曜の午後になっていて、もう新しいお題になってしまったのですが許してください。


 今の自分にとって一番縁遠い話題だなとも思ったけれど、裏を返せば「きっかけがないと書けない話題」だ。なので、はてなに甘えて昔話をしたい。

 「前略プロフィール」。私と同年代の人なら一度は見たことがあると思う。知らないという若い方も多いかもしれない。いくつかの設問に答えるだけで自分のプロフィールページが作れるWEBサービスで、ケータイサイト*1を持っている子は「前略」でプロフィールを作り、自己紹介としてリンクを貼るのが定番だった。
 リンク先に書いてある通り、「前略」が2016年の9月に終了した。私も昔プロフィールを作っていて、思い出すのも恥ずかしいことを書いていたが、その黒歴史が消える喜びより先に思い出す名前があった。高校時代、友達の友達だったUだ。
 私は、Uにこっそり想いを寄せていた。同じバンドが好きで、成績は良くないけど博識な人だった。Uを介して知った音楽や小説がたくさんある。先に書いたとおり友達の友達なので、廊下で会ったらちょっと立ち話するとか、グループで遊ぶ程度の仲。ちょうど現実世界の交友関係がインターネットに持ち込まれ始めた時代だったけれど、何の用もないのにメールのやり取りをすることもなかった。当時の私は自意識過剰な上、見た目にコンプレックスがあって、友達に協力を頼むようなこともできずにいた*2
 高校のほぼ3年間、ずっとUのことが好きだったのに、結局何もないまま卒業した。それからは1回も会ってない。

 Uも「前略」を使っていたのを思い出して、なんとなく、彼の高校時代のニックネームで検索してしまった。
 何年もアクセスしていなかったのが嘘みたいに、拍子抜けするほど簡単に、Uのプロフィールは見つかった。本人もプロフィールを作ったことすら忘れているらしく、当時の写メがそのまま使われている。変わったのは、そのページを見ているツールがdocomoFOMAからiPhone6sになったことと、私が歳をとったことくらいだろう。
 彼は元気だろうかとか、好きって言えばよかったとか、そんな甘酸っぱい気持ちよりも「まだプロフィールが残っていたんだ」という驚きが大きかった。インターネットを使わない日は無いはずなのに、同じ空間に、何年も触れることのないままそれらが残っていることに驚いた。

 なんだか、墓参りみたいだ。
 ちょっと前に話題になった、バーチャル墓参りを思い出した。自分の家の墓が徒歩圏内にある私は、この話を初めて聞いた時「なんじゃそら」と思ったけれど、きっとこんな感覚なのだろう。遠くへ行ってしまった人を思い出して、その人の気配が残っている場所に向かう、この感じ。宇宙みたいに広いインターネットで、Uのプロフィールは、現在の私の日常と地続きに存在していた。本来であれば、見ようと思えばいつでも見られたはずなのだから。なのに、盆だの彼岸だのきっかけがなければ、その存在すら思い出さなくなっていた。
 聞こえは悪いが、「前略」は霊園になっていたのかもしれない。黒歴史と言ってしまえばそれまでだけど、誰かの数年前の思い出が何万人分も埋まっている。でも、もう誰もそこへ思いを巡らせることはなかったし、見に来ることも無くなっていたのだ。無縁墓ってやつだ。無縁墓は、片づけるしかない。

 WEBサービスは流行り廃りが激しくて、儲からなくなればすぐ消えてしまう。こうやって私は、今後ますます彼を思い出さなくなるし、同じようにたくさんの人やものを思い出さなくなっていくだろう。
 Uのプロフィールを閉じて、さっさとツイッターのタイムラインに戻った。未読のツイートがたんまり溜まっていた。いつかツイッターも、同じように人がいなくなって、片付けられてしまうのだろうか。

*1:そう、魔法のiらんど

*2:今思えば態度でバレバレだったと思うけれど