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揮発性のことば

なんにも 残らない

チケットの一般発売でかなり消耗したけどいろいろと考えてしまった話

スピッツ

www.moae.jp


 竹内佐千子さんのマンガが好きで、このWEB連載「2DK」も毎回楽しみにしていた。「2DK」は、若手俳優のおっかけをしている女性2人がルームシェアをする物語だ。何かしらのジャンルを追っかけている人には共感できるポイントが盛りだくさんなので、是非読んでみてほしい。
 この第130話「本気」のエピソードを思い出しながら、私はロッピー前に立っていた。スピッツの一般発売に挑むために。

 スピッツはいわゆる「チケットが取れないバンド」だ。びっくりするくらい取れない。
 彼らの意向で、ツアーはアリーナではなくホールを主としている。はっきり言って、人気と会場のキャパが釣り合っていない*1。都市圏の公演ともなると、ファンクラブ先行もダメ元に近い。
 私は地方住まいなのもあり、以前はファンクラブの先行予約でチケットを押さえていた。会員更新を忘れていた「小さな生き物ツアー」も、モバイル有料会員になることで何とか事なきを得た。ところがどっこい、今回はそのモバイル先行予約すら忘れていたのだ。この時点で9割5分詰んでいる。ローチケの抽選先行はもちろん落選し、協賛である地元テレビ局やFM局の番組限定予約も参加できなかった。残された道は一般発売のみ。ほぼ負け戦と言っていい。

 そして冒頭に戻る。私は片田舎のローソンで、午前10時を待っていた。お店の方には長居して申し訳ないと思いつつも、ロッピー前で突っ立っていた。別の店舗でも姉がロッピー前で待機しており、今回は県外の友人にも協力をお願いした。(その節は本当にありがとうございました)
 ポンタカードを手元に用意し、ロッピーの画面にはLコードを入力しておく。10時の時報とともに、右下の「次へ」を押すイメージを、何度も繰り返した。一発目が勝負だ。ここで「ただいま混み合っております」などとメッセージが出ようものなら、そこで終わり。WEBでの申込みは最初から捨て、スマートフォンで時報を聞きながらそのときを待った。117をダイヤルしたのなんて何年振りだろう。

 これだけ必死に準備していながら、私は「どうせ取れないだろうな」「空売りかもしれない」と思っていた。さっき書いた通りスピッツのチケットは秒単位で売り切れるし、人気公演のチケットを一般で取れた経験は数えるほどしかない*2。百戦錬磨のロッピー使いたちや、ダフ屋のちょっとアレな手口には勝てないと思っていた。
 なので、一発で次の画面に繋がったとき、何が起こっているのか分からず、一瞬手が止まってしまった。心のどこかで諦めていると、いざ繋がったときに身体が硬直して動けなくなる。アスリートが、あれだけメンタルトレーニングとやイメージトレーニングに取り組んでいる理由が、やっと分かった*3。画面にはすでに「残りわずか」の文字。この一瞬の躊躇いが命取りだ。私は我に返って、急いで日にちを選び、枚数を入力し、ポンタカードを読み込ませた。電話番号と誕生日を打ち込んで、何回も出てくる「この内容で合ってるよな?手数料かかるけどいいよな?」というロッピーの念押しに耐えた。傍から見れば、たぶん1分もかからなかったと思う。
 長いレシートがじりじりとロッピーから吐き出される。私はその様をぼんやりと眺めていた。全身の力が抜けていく。

 やった。やりやがった、私。取ってしまった。

 姉に「取れた」と連絡をし、友人たちにお礼のメッセージを入れ、ふらふらとレジへ向かった。私は完全にハイになっており、手が震え、挙動もおかしくなっていたので、店員さんに苦笑いされた。チケットを発券し、コロッケを買って帰った。
 席は一番上の階、かなり後ろの列だった。それでも一向にかまわなかった。その場にいられること、スピッツの音楽に生で触れられることが何よりうれしかった。結局その日はそれだけで疲れてしまい、家でごろごろして休日が終わった。

 今回一般発売にあたって、前もってネットであれこれ検索していた。開始前にLコードを入れておくこと。ポンタカードを準備しておくこと。実際にやってみて他に気づいたことは、「練習」と「心を強く持つこと」だった。
 馬鹿みたいな話だが、一般発売の数日前、別の公演のLコードを利用して「ロッピーを使う練習」をした。最後の確定ボタンを押す手前までの流れを確認するために。自分のポンタカードに住所と名前が登録されていなければそこで分かるし、本番前に準備が出来る*4。今思えば、「なるべく早く手続きをする練習」もしておけばよかったなあと思う*5
 「心を強く持つこと」については先述のとおりである。「なんだよ精神論かよ…」と言われそうだが、実際にネットや電話が繋がったとき(うまくいったとき)、びっくりして身体が動かなくなった。どれだけ練習やイメトレをしていようとも、この一瞬がタッチの差になる可能性は大いにある。言霊の力は侮れないので、「行ける」「取れる」と口にするように日頃から心がけていたけれど、その一方で「でもどうせ取れないだろうな」と思っていた。ここが甘かった。「強い気持ちを持つ」というのは、ことをうまく運ぶためのものではなかった。本当にうまくいったときに、弱い自分が顔を出さないためのものだった。

 まさかチケットの一般発売のことを書いていたら自己啓発本みたいな内容になるとは思わなかった。でも本当にそう感じたので、今後また一般発売まで追い込まれたときのために、書き残しておこうと思った。
 そしてなにより、先行予約のありがたみを改めて思い知った。当たり前のことだが、先行予約で押さえられるものならば、それが一番いい。ファンクラブもそうだし、地元公演なら協賛テレビ局・ラジオ局・地元紙の先行予約をもっと入念にチェックすべきだった。今後は一般発売でこんなに消耗せずに済むよう取り組んでいかねばなるまい。先行予約最高!

 

 

 

*1:メジャーデビューは1991年だが、初の単独アリーナ公演が行われたのは2009年。今年のロックロックこんにちは!@大阪城ホールなど、イベントには大きな会場がちょこちょこ使われている

*2:一番興奮したのは、ファンクラブ先行でも取れなかったFORFIVEツアー明石公演をイープラス一般で取ったとき

*3:こんなことで比べるなんて失礼極まりないと重々承知の上で

*4:登録されていないまま一般発売に挑むと、ロッピーで名前や住所を手打ち入力しないといけなくなり、大幅なタイムロスになる

*5:もちろん、店員さんやロッピーを使いたい他の方の迷惑にならないように…