揮発性のことば

なんにも残らない

遠征の持ち物リスト作ったよー

 先日Twitterでブログのネタのアンケートをとったところ、一番得票が多かったのが「遠征かばんの中身」だった。雑誌のかばんの中身特集はもちろん、アイドルファンや若手俳優ファンの遠征の持ち物ブログを見るのが好きなので、備忘録も兼ねて自分なりに書きたい。
 遠征した宿で写真を撮るため持ち物を広げていたのだが、職場でも人目につく小物をネットに晒すことで色々とバレるのではないかという不安に駆られ、文字だけで更新することにした。この手の記事は写真を載せないと面白さ7割減だが、自己満足なので許してほしい。

 今回は、
・泊まり遠征の中でも近場
・1人
・暖かいので軽装
 という条件が揃い、なんともゆるい荷造りになっている。

 

 まずは会場に持ち込むかばん。
 無印のバッグインバッグでまとめてからかばんに入れている。

 

 スマートフォン
 最近はチケットが電子化したり航空券をiPhoneのWalletに入れたりするので、ますます手放せなくなった。学生時代スマホを家に忘れて取りに帰り、バスの出発時間ぎりぎりになったことがあるので本当に笑えない。

 財布
 マーガレットハウエルの長財布。遠征の内容によって*1、現金と最低限のカードだけビームスの小さい財布に移し替えている。

 iPod nano
 待機列中に宗派違いの人が後ろで喋っているとイライラするので欠かせない。電池がすぐなくなる。

 文庫本
 移動中に読む用。行きは浮き足立っているし帰りは余韻でぼんやりしているので、開かないことが多い。今回の中身は「閃光スクランブル」。

 モバイルバッテリー
 機種変してからバッテリーのもちが良くなったので出番は少ない。念のため。

 Suica
 大阪だとエンジョイエコカード*2のほうが安上がりなことが多いので、コインロッカーの支払いと関東圏の遠征くらいしか使わない。

 ポーチ
 大昔のELLE Girlの付録のポーチに、リップ、ハンドクリーム、あぶらとり紙、鏡、ティッシュ、絆創膏だけ入れている。そろそろ付録のポーチ使うのやめたい。

 エコバッグ
 物販で買ったものを入れたり、ホテルからコンビニに行くときなどに重宝する。冬場は脱いだコートをたたんで入れて、座席の下に突っ込むこともある。大好きな中原淳一のひまわり柄。

 おしぼり
 コンビニで買い物するともらえるアレ。何かと便利なので、日頃からかばんに2枚くらい入れている。おばちゃん化の始まりを感じている。

 チケットケース(とチケット)
 封筒型で、スナップボタンで蓋ができるチケットケース。クリアファイル素材のチケットケースは、上からチケットが滑り落ちそうなので使わないようにしている。中に仕切りがついていて、必要なときはFC会員証も一緒に入れる。家を出る時に中身含め指さし確認をしている。

 双眼鏡
 ケンコーの8×21。ホームセンターで3000円くらいのやつだけど、そこそこ明るくてホール公演はこれで十分。

 キングジム・スーパーハードホルダー
 「遠征の持ち物」という話題に触れるたび、人に勧めまくっている。クリアファイルの片面が下敷きのような硬いプラスチックになっていて、書いたファンレター、もらったチラシ、パンフレット、ゴスの物販でもらうショッピングバッグ等、とにかくシワをつけたくないものを入れている。軽いし、アンケートを書くときにも下敷きとして使えるし、値段も手ごろなのでおすすめ。

 メモとペン
 ステージ上を見るのに必死なので本番中に使ったためしがなく、ファンレターの下書きやアンケートに使うことが多い。遠征に手帳を持っていくのはかさばるのでやめた。

 ツアータオル
 だって!誤植だって聞いたから!持っていくしかないじゃないか!!タオルを持っていくときは面倒くさがってハンカチがわりにしているので、今回はハンカチが入っていない。

 
 のどが渇くので甘いものは買わない。

 

 続いて宿で使うものを入れるかばん。
 基本的に「ホテルにあるもので済ます」スタンスなので、寝間着もヘアアイロンもタオルも持っていかない。が、今年に入ってキャリーケースを買ったので、最近荷物が増えがち。

 衣類
 翌日分の服と下着とハンカチ。昔フェリシモのカタログについていた、ナイロン製のミッキー柄の巾着に入れている。軽くて大きくて丈夫、かつ透けなくて便利。圧縮袋は使わない。汚れたものを入れるためのレジ袋も畳んで一緒に入れておく。1人の時はボトムを着まわす。

 充電グッズ
 スマホiPod nano・モバイルバッテリーの充電コード、ACアダプター、コンセントが足りないとき用の電源タップ。古いホテルはコンセントが少ないことが多く、電源タップがあると本当に捗る。日頃から180cmのlightningケーブルを使っているので、枕元にコンセントがなくてもなんとかなる。

 化粧ポーチ
 基本的には毎日使っているものをそのまま。ファンデーションはガラス瓶が重くてかさばるので、それだけはクリームケースに移し替えている。テクスチャが硬めなので大丈夫。他ヘアクリップやヘアブラシ、アクセサリーケース、綿棒等。翌日はもう帰るだけ、というときは中身がごんごんリストラされる。

 お風呂グッズ
 シャンプーもボディーソープも、アメニティが良さそうだったらそれで済ませてしまう。逆に譲れないのが歯磨き粉とボディタオルと泡だてネットで、これは自分で持っていく。あとバスタブにお湯を張るのが好きなので、家で持て余している入浴剤を持って行くことも多い。
 スキンケアもサンプル等を利用し、とにかく荷物と手間を減らす。化粧水のサンプルが無い時は、コットンに染ませてから100均のジッパー袋*3に入れて行けば、使い終わったらそのまま捨てられるのでラク。シートパックとニベアだけで済ます時もあるが、今のところ差し障りはない。ニベアがあれば何とかなる。濡れても平気で軽いメッシュポーチにまとめている。

 その他化粧品
 日焼け止め、整髪料、脚の疲れを取るシートなど。

 折りたたみ傘
 東京事変の名古屋公演を見に行った時、名古屋駅の地下で急遽買ったもの。もう10年近く使ってるので、いい加減ちゃんとしたやつを買いたい。

 他、季節や夜行バスの利用で増減がある。制汗剤、アイマスク、マスク、耳栓等。

 

 フィギュアスケート観戦は持ち物が特殊なので、その時だけ必要なものも書き足しておく。

 ひざ掛け
 夏でも必須。薄手のものでも、あると無いとでは全然違う。

 ユニクロ・ウルトラライトダウンジャケット
 これも季節問わず必ず持っていく。くるくる丸めて小さく畳めるわりに着ると暖かい。1シーズン前のものを安く買ったため、ものすごく目立つ色でちょっと恥ずかしい。

 スマホトー
 最近よく見る、斜めがけできる小さいポーチ。とりわけ試合は長丁場なので、貴重品入れとして必要。コンサートや演劇でも防犯対策に使えばいいんだろうけど、つい面倒くさがってしまう。

 ステンレスボトル
・家から熱いお茶を入れて行く
・空のまま会場へ持っていき、近くのコンビニであたたかい飲み物を買って移す
・ホテルのティーパックと湯沸かし器でお茶を作って会場に行く
 等いろんな使い方ができる。飲み物代が浮くし、中身は冷めないし、密封できるので氷上席でこぼす心配もない。350ml入れば十分。コーヒーが好きな人はスタバで温かいものを入れてもらってもいいと思う。

 折りたたみ座布団
 100円ショップで普通に買える。あまり寒くない席に座るときや、バスのフットレストがないときは、尻に敷かず靴を脱いだ足を置くこともある。ただのスポンジなので洗うのも簡単。たまアリやなみはやドームは座席が布張りなので持っていかないことも多い。

 トール・レッグウォーマー・カイロ
 会場や席のランク*4によって、持って行ったり行かなかったり。拍手したいので手袋しない派。

 応援グッズ
 バナーやバナータオルやPIWのペンライト等々。

 

 荷物は必要最低限にまとめている方だと思っていたけれど、いざ書き出してみると結構な量になった。次の遠征はPIW東京なので、随分先になる。早くこのリストを見ながら荷造りしたい。多分そのときになったら直前にあわてて詰め込んで高田馬場のドンキで間に合わせたりしてそうだけど。

 

 

*1:荷物が多いフィギュアスケート観戦、荷物をとにかく減らしたい立ち見のライブやフェスなど

*2:600円で大阪市営交通が1日乗り放題になるカード

*3:カードがギリギリ入らないくらいのサイズで何十枚も入ってるやつ

*4:新横浜や東伏見のような常設リンクか、キャパの大きい会場か、氷に近い席か

【ネタバレ】「ゴスペラーズ坂ツアー2017"Soul Renaissance"」のセットリストに思うこと

Soul Renaissance(初回生産限定盤)(DVD付)

Soul Renaissance(初回生産限定盤)(DVD付)

 

 タイムラインのゴスマニアたちが参加した順に語彙を失い、うわごとのように「やばい」「しぬ」と口走る、「ゴスペラーズ坂ツアー2017"Soul Renaissance"」。先日ついに参加してきたので、お酒の勢いで思ったことを書きなぐる。
 確かにあれは「やばい」し「しぬ」。行く予定が無かった人は、悪いことは言わないので、まだチケットが買える公演に行った方がいい。

 今回の記事はMCなどには触れず、「セットリストの選曲」について私が思ったことをだらだら書いている。なのでセットリストのネタバレはしつつもライブレポらしさは無い。それでも大丈夫という方のみ「続きを読む」をクリックしてほしい。といっても私も1回しか見てないので記憶が怪しいし、全日本選手権だったら見切れB席2,500円で解放されるような端の席で、下手側のバンドメンバーがほとんど見えなかったんだけど。

 

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生まれて初めてジャニーズのCDを買った

お題「NEWS「NEVERLAND」レビュー」
 (レビューと呼べるほど立派なものではありませんがお題お借りします)

 生まれて初めて、アイドルの、ジャニーズのCDを買った。
 これまでアイドルとはあまり縁のない生活をしてきた。意識的に避けたり、嫌っていたわけではない。むしろファンのブログは大変興味深く面白いので日常的に読んでいた。ただ、他にも追いかけたい対象がたくさんあるし、倹約しなくてはと思っていた矢先の出来事だったので自分でも驚いている。

 今、NEWSの「NEVERLAND」が手元にある。4人各々のソロ曲が収録された通常盤と迷って、初回盤を選んだ。そもそもなぜ購入に至ったかというと長くなるのだが*1

 カラオケでたまたま見た「KAGUYA」のMVに釘づけになる
 ↓
 その足でゲオに駆け込み「QUARTETTO」「White」「NEWS」を借りたらものすごくよかった
 ↓
 えっアルバム出るの?え?来週?買います

 カラオケからAmazonまで4日*2。人生何が起こるか分からない。にしても「QUARTETTO」が良盤すぎてもっと早く知りたかった。
 「NEVERLAND」はファンタジックなコンセプトとファン層の厚さから、いろんな感想や考察が読めるのがとても楽しい。

 この先の文章は、メンバーそれぞれの声質や歌割りにはほとんど触れていない。曲の世界観と曲順から勝手に想像したものである。
 私はアルバムを4枚聞いただけなので、とにかくNEWSについての知識が乏しい。加藤さんのライナーノーツも未読で、メンバーの歴史やバックグラウンドをすべて把握しているわけでもない。ゲームで言えば無課金新規ユーザーみたいなものだ。「そんな奴が偉そうに感想なんて書くなよ」と言われればそれまでだが、そんな奴でも書かずにいられなかった魅力が「NEVERLAND」にはあるんだな、こんな感想を持つ奴もいるんだなと読み流してくださればありがたい。

 初回盤特典の「鍵」は細部まで作り込まれていて可愛らしく、しっかりとした重みがある。ビジュアル・歌詞・DVD、あらゆる場面に登場する「鍵」。それが今手の中にあるという体験、高揚する気待ちまで含めてひとつのパッケージになっている。物語に出てくるアイテムをツアーグッズとして売る手法はよくあるけれど、特典につけちゃうところがすごい。NEVERLANDの物語はCDから始まってツアーに続くのだから、ツアーではなくCDと同じタイミングで手に入るというのが重要なのだ。地味だけれど紐や金具をつけられるのもいいなと思う。使い道を考えるのが楽しいし、大量生産だと分かっていても「私の鍵!」感が味わえる。蛇足だが「カードキャプターさくら」世代なので、アイテムとしての鍵はとてもワクワクする。

 「"The Entrance"」のナレーションは「奥様は魔女」のお決まりのオープニングのようで、これから可愛いメルヘンの世界は連れて行かれる……と思いきや、いきなり表題曲「NEVERLAND」のダークさに突き落とされる。不可能は無い代わりに理不尽で無秩序で、ティム・バートンの世界のようである。表題曲らしく、鍵、夢、7つのエレメンツ、アルバム全体を象徴するような言葉がいっぱい散りばめられている。
 いろんな方が触れている「アン・ドゥ・トロワ」の「イきたい」という表記、「イってるのは、トリップ系の魔法がキマっちゃってる、という解釈もあるのでは」と思っている。「NEVERLAND」から続く曲にしては、わざとらしいほどキラキラな理想の世界。でも「夢なら覚めないで」「幻想のよう」という言葉から、やっぱりこれは幻なのだ。24時のベルが鳴れば、馬車はカボチャに、ドレスはボロ着に戻ってしまう*3。魔法が解けた視界から「視線あわせる」「見つめて」という誘い文句で目を逸らさせる、美しくて楽しい世界はいかにも罠。
 「アン・ドゥ・トロワ」で24時に「踊りましょ」と誘われて、それに乗ったつもりでいたらAM0:00にきっついギムレットを飲まされる。NEVERLANDは何かと誘惑の多い世界なのだろう。そんな洗礼を受けた後にやってくる7つのエレメンツの説明。一見なんでもありでカオスに見える世界も、案外シンプルな要素でできている。
 「Brightest」から「恋を知らない君へ」までは恋の曲、しかもハッピーエンドではない3曲が続く。強すぎるほどの光で、おそらく「君」の本当の輪郭が見えない者。口にできない「行く宛のない」想いを抱える者。「あの夏」へ戻りたくても戻れない者。状況は違えど、みんな進めないままそこにいる。「もしかしたら自分も、戻ることも進むこともできなくなってしまうのでは?」という不安にインタールードが入ってきて、NEVERLANDでの4人の存在を思い出させてくれる。
 NEVERLANDからの帰還パートが「ミステリア」で始まる。「夜」「ひとり」「汽車」「窓の外」、そして「ORIHIME」の「999」というワードが並ぶと、ラーメンズの「銀河鉄道の夜のような夜」を思い出してしまう。あのコントの「ずっと一緒に行こうな」という台詞が切なくて大好きなのだが、CDに封入された招待状の縦読みに不思議とリンクする。宮沢賢治銀河鉄道の夜」の「どこまでもどこまでも僕たち一緒に進んでいこう」も。


ラーメンズ『TEXT』より「銀河鉄道の夜のような夜」

 「ORIHIME」で夜汽車は4人に見送られ、夜空を走る様は「流れ星」のように消えていく。ここで物語は大団円を迎える*4
 このアルバムを初めて通して聞いたとき、なぜ「U R not alone」の前に「"The Grand Finale"」が入っているのか不思議で仕方なかった。普通だったら「U R not alone」の後に「"The Grand Finale"」と「"To Be Continued…"」を合わせたトラックをつけそうなものなのに。
 「U R not alone」は、NEVERLANDの外側にある歌なのだと思う。NEVERLANDから唯一持って帰ることができた、あの世界にいたことを証明してくれるもの。サツキとメイがドングリの芽を見て「夢だけど、夢じゃなかった」と飛び跳ねたり、千尋のポニーテールで銭婆のヘアゴムがキラッと光ったみたいに。「ミステリア」のツアーの客は、本当にひとりだけだったのだろうか。その答えがおそらく「U R not alone」なのだ。
 そして「"To Be Continued…"」でツアーへの期待を残しつつ、このアルバムは終わる。

 ジャニーズでもジャニーズ以外でも、他のアイドルがどういうスタンスで活動しているか分からないが、「NEVERLAND」はどこまでも聞き手を「個」して扱っている印象を受けて驚いた。私は個人的に、ファンというものは大きなうねり、「かたまり」のように考えていて、その大きな力を持った「かたまり」が時に本人を支えたり掌を返したりするものだと今でも思っている。そして私はその一部に過ぎないと。鍵といい招待状といい、とにかく「NEWSは『あなたと』一緒です」という意図が端々から伝わってきて、これはファンは幸せになっちゃうよなあ、だって私でもすごく嬉しくなっちゃうもん、アイドルってすごいパワーを持っているんだなあと感服した。

 ここまでとにかく好き放題書き散らかしてしまい、他の方の記事と似たようなところもあるだろうし「それは全然違う!」と思うところも多々あったと思う。こっそり教えてやってほしいし、むしろオススメのアルバムや曲があったら教えていただけるとものすごく嬉しい*5
 スケジュール帳を見たら、なんの因果か6月10日は仕事で上京する予定になっていた。せっかく東京にいるのに物語の続きが見られないなんてつらすぎる。ソフト化したら買ってしまいそうな自分がいる。



*1:試しに書いてみたけれどつまらない文になった

*2:結局Amazonお得意の「予約受けたけど在庫確保は何日も先だよ☆」を食らったので待ちきれずに地元のお店で発売日に買った

*3:そういえばシンデレラのシャルル・ペローはフランス人だ

*4:「BLACK FIRE」にはノータッチで申し訳ない。思い切りロックなのにメロディが泣かせにきててとても好きです。青エクのOPに流したい

*5:どのファンブログにも必ずと言っていいほど「『美しい恋にするよ』DVDを見ろ」と書いてあり凄まじい引力を感じている

「前略プロフィール」とバーチャル墓参り

今週のお題「恋バナ」
※いつの間にか木曜の午後になっていて、もう新しいお題になってしまったのですが許してください。


 今の自分にとって一番縁遠い話題だなとも思ったけれど、裏を返せば「きっかけがないと書けない話題」だ。なので、はてなに甘えて昔話をしたい。

 「前略プロフィール」。私と同年代の人なら一度は見たことがあると思う。知らないという若い方は調べてみてほしい。いくつかの設問に答えるだけで自分のプロフィールページが作れるWEBサービスで、個人でケータイサイト*1を持っている子は、この「前略」でプロフィールページを作り、自己紹介としてリンクを貼った。
 リンク先に書いてある通り、「前略」が2016年の9月に終了した。私も昔プロフィールを作っていて、思い出すのも恥ずかしいことを書いていたが、その黒歴史が消える喜びより先に思い出す名前があった。高校時代、友達の友達だったUだ。
 私は、Uにこっそり想いを寄せていた。同じバンドが好きで、成績は良くないけど博識な人だった。Uを介して知った音楽や小説がたくさんある。先に書いたとおり友達の友達なので、廊下で会ったらちょっと立ち話するとか、グループで遊ぶ程度の仲。ちょうど現実世界の交友関係がインターネットに持ち込まれ始めた時代だったけれど、何の用もないのにメールのやり取りをすることもなかった。当時の私は自意識過剰な上、見た目にコンプレックスがあって、友達に協力を頼むようなこともできずにいた*2
 高校のほぼ3年間、ずっとUのことが好きだったのに、結局何もないまま卒業した。それからは1回も会ってない。

 Uも「前略」を使っていたのを思い出して、なんとなく、彼の高校時代のニックネームで検索してしまった。
 何年もアクセスしていなかったのが嘘みたいに、拍子抜けするほど簡単に、Uのプロフィールは見つかった。本人もプロフィールを作ったことすら忘れているらしく、当時の写メがそのまま使われている。変わったのは、そのページを見ているツールがdocomoMOVAからiPhone6sになったことと、私が歳をとったことくらいだろう。
 彼は元気だろうかとか、好きって言えばよかったとか、そんな甘酸っぱい気持ちよりも「まだプロフィールが残っていたんだ」という驚きが大きかった。インターネットを使わない日は無いはずなのに、同じ空間に、何年も触れることのないままそれらが残っていることに驚いた。

 なんだか、墓参りみたいだ。
 ちょっと前に話題になった、バーチャル墓参りを思い出した。自分の家の墓が徒歩圏内にある私は、この話を初めて聞いた時「なんじゃそら」と思ったけれど、きっとこんな感覚なのだろう。遠くへ行ってしまった人を思い出して、その人の気配が残っている場所に向かう、この感じ。宇宙みたいに広いインターネットで、Uのプロフィールは、現在の私の日常と地続きに存在していた。本来であれば、見ようと思えばいつでも見られたはずなのだから。なのに、盆だの彼岸だのきっかけがなければ、その存在すら思い出さなくなっていた。
 聞こえは悪いが、「前略」は霊園になっていたのかもしれない。黒歴史と言ってしまえばそれまでだけど、誰かの数年前の思い出が何万人分も埋まっている。でも、もう誰もそこへ思いを巡らせることはなかったし、見に来ることも無くなっていたのだ。無縁墓ってやつだ。無縁墓は、片づけるしかない。

 WEBサービスは流行り廃りが激しくて、儲からなくなればすぐ消えてしまう。こうやって私は、今後ますます彼を思い出さなくなるし、同じようにたくさんの人やものを思い出さなくなっていくだろう。
 Uのプロフィールを閉じて、さっさとツイッターのタイムラインに戻った。未読のツイートがたんまり溜まっていた。いつかツイッターも、同じように人がいなくなってしまうのだろうか。

*1:そう、魔法のiらんど

*2:今思えば態度でバレバレだったと思うけれど

2016年現場まとめ

 ものすごく今更な感じもするけれど、去年行った現場とかあれこれをまとめておこうと思う。
 2015年の秋から2016年の3月までは勉強にあてていたため、空白期間になっている。まさかこの歳になって平日毎日学校へ行くとは思っていなくて、とても貴重で充実した時間だった。試験には落ちたけど。なので2016年は実質9ヶ月くらいの現場記録になっている。


 4月25日
 GOSMANIAファンの集い2016@ZeppNAMBA

 ゴスのライブはほぼ1年ぶりだった。
 1人足りないゴスを見るのはテレビでもつらくて、北山さんが休養を発表して以降、ライブから足が遠のいていた。
 久しぶりの現場は前となにも変わってなくて、友人たちも変わらず接してくれた。本当にありがたい。開演前から緊張で手汗が止まらず、隣の席の見ず知らずのお姉さんにまで心配されてしまった。「北山さんが復帰してから初めてのライブなんです、手紙も書いたんです」って言ったら「早くボックスに入れておいで!」と言ってくれた。みんなが優しい。ステージの上には、私の大好きな5人がいた。1曲目の1音目で緊張は吹っ飛んで涙が止まらなくなった*1。5人がそこにいることが、いかに当たり前で当たり前じゃないことなのかを痛感する公演になった。泣いて笑って泣いて、帰り道のゴミゴミしたなんばの街がキラキラして見えた。
 今年はいよいよ大型ツアーが始まる。この「どこへ行こうか」と計画する感覚、本当に久しぶりでワクワクする。


 4月29日 AM/PM
 5月5日 AM/PM
 Prince Ice World 2016 inYOKOHAMA@新横浜スケートセンター

 町田さんの出演情報の変更などがあって、GW中に夜行バスで東京2往復という鬼スケジュールになった。体力的にも金銭的にも、二度とこんなことはしまいと心に誓った。でも譲りに出さず自分で行ってよかったなと思う。
 プリンスチームの演技にゴスの「ロビンソン」、テレビ放送には乗らなかったけれど最後にオールキャストで挨拶をする時に「夢伝説」が使われていてとても嬉しかったし、初演では客席でひとり興奮してしまった*2
 当日券に並んでいたら、春香クリスティーンさんも列に並んでいた。テレビでは政治オタクな「かわいいけれどちょっと残念」的扱いをされているけれど、顔が小さく色白で、テレビで見るよりずっと華奢で、スケオタの群れの中で一人ピカピカと光っていた。町田ファンだと聞いて親近感を持っていたけど、そんなものを持ってるのが申し訳ないくらい、とってもかわいい女の子だった。それにしても都会って本当に芸能人が道を歩いてるんだな。


 7月16日 PM
 7月17日 AM
 Prince Ice World 2016 inTOKYO@東伏見ダイドードリンコアイスアリーナ

 これを書いている今でも、なぜこのタイミングで東京まで行ったのか、自分でも分からない。この頃ちょうど仕事が決まり、頭がお花畑状態だったのだと思う。オープニングの町田さんの立ち位置が横浜から変わっていて、16日午後は恐ろしく近かった。戻りで買ったチケットだったけど、本当ラッキーだったなと思う。
 本音は18日の社会調査に参加したかったけれど、泣く泣く東京を後にした。お手紙もお花も渡せない、SNSをしていない、メディア露出も現役時代ほどではない今、町田ファンが町田さんにできることは多くない*3。だから、なにか目に見える形で協力できる貴重なチャンスだったなと今でも少し後悔している。


 10月1日
 Japan Open 2016@さいたまスーパーアリーナ
 Carnival on Ice 2016@さいたまスーパーアリーナ

 去年、関西よりも関東に行っている。どうりでお金がないわけだ。たまアリは2008年の椎名林檎10周年ライブ以来で、当時の記憶よりずっと狭く感じた。私は2013年全日本も2014年世界選手権もテレビで見たので、ああ、ここで町田さんはソチへの切符をつかんだんだ、ここであのエデンの東をやったんだ…と思うと、試合前から胸がいっぱいになった。
 こうやって振り返っていると、2016年は町田さんの新プログラムを前情報なしで2度見ている。なんとも心臓に悪い1年だった。


 10月9日
 DAICHI MIURA LIVE TOUR 2016 (RE)PLAY@神戸国際会館こくさいホール

 三浦大知さんは、一度生でパフォーマンスを見てみたいと思っていたので、友人に誘ってもらえてとてもうれしかった(本当にありがとう)。
 前々から「抜かれる用の度肝を用意しておかないといけない(そしてそれも足りなくなる)」と聞かされていたけれど、度肝抜かれすぎてハチの巣になるんじゃないかと思った。その場でポンと垂直に軽く跳ぶとか、足を蹴り上げるその一つ一つのちょっとした動きが、勢い任せではなく完全にコントロールされているものだと素人目にも分かった。体幹どうなってるんだろう。タイトル通り、頭の中で何度もリプレイしてしまう瞬間だった。あと曲と曲のちょっとした暗転の間、客席のイケてる女の子たちがだいちーーー!!と叫んでいてなかなかカルチャーショックだった。お客さんオシャレな人がいっぱいいたし見るからにダンスやってる人もいっぱいいた。初めて行く現場は客層を見るのも面白い。


 11月3日
 私立探偵ケイレブ・ハント/GREATEST HITS!@宝塚大劇場

 宝塚歌劇も一度見に行きたいと思っていて、家族とバスツアーで日帰り遠征してきた。雪組を選んだのは、単純に演目が面白そうだった&時代背景的に娘役の衣装が絶対かわいいと思ったのと、以前テレビで見た「ラ・エスメラルダ」の望海風斗さんに釘付けになってしまったからだった。実際に見たらやっぱりすごくかっこいいし歌もお上手で思わずブックマークを買ってしまった。舞台写真は売り切れていた。
 もともと、はるな檸檬さんの漫画がとても好きなので、観劇も「おお、これが漫画に出てきたアレか」と思いながら楽しむことができた。大きな劇場のはずなのに舞台が見やすいようにできているし、観客へのマナー喚起なども気が利いていて、初心者もファンも快適に観劇できる工夫がなされているのを感じる。そして、劇場に一歩足を踏み入れたときから、お客さんがスムーズに観劇を楽しめるようにありとあらゆる用意がされている。お買い物も食事もできるし、郵便局からフォトスタジオまであるし、もはや一つのテーマパークのようだった。ここにいる間は、現実から解放されて宝塚の世界に没頭できるようにできている。100年続くエンターテイメントの本気。機会があればまた観に行きたい。


 12月11日
 SPITZ JAMBOREE TOUR2016 醒 め な い@とりぎん文化会館 梨花ホール

 夏にブログに書いた通り、必死こいてチケットを入手したスピッツ。2年9か月ぶりのスピッツ。最上階最後列のいわゆるハズレ席なのだけれど、イントロが流れた瞬間、そんなのどうでもよくなってしまうスピッツ。ほんとに30年近くやっているのかと聞きたくなるようなMCをするスピッツ。「鳥取砂丘へ遊びに言ったら帰りのバスが無くなってしまい、砂丘から駅前まで歩いた。通ったトンネルが実は『出る』トンネルだったと後から知った」という話を、鳥取公演のたびにしてくれる草野さんが好きだ*4
 鳥取公演の時点で声がちょっとガサガサしていて、珍しいなと思っていたら翌日以降の公演がキャンセルされてしまって驚いた。お大事になさってください。というかここ何年かツアーのたびにキャンセルが出がちなので事務所はもっと余裕を持ってスケジュールを云々。


 12月24日
 12月25日
 第85回全日本フィギュアスケート選手権大会@興和薬品RACTABドーム

 書きたいことは沢山あるけれど、個人的に一番胸に残っているのが村上佳菜子選手のフリー「トスカ」。1ヶ月近く経った今でも、あの瞬間のなみはやドームを思い出すだけで鳥肌が立つ。一人だけ違う競技をしているみたいだった。会場全体を包む「こんな村上佳菜子が見たかったんだ」という興奮は、2014年の全日本の小塚さんのフリーのそれを彷彿とさせた。人目も憚らず泣いた。
 そして本郷理華選手の「リバーダンス」を生で見られたのがとても嬉しかった。何がなんでも全日本で上位に入ってやるんだという意気込みでプログラムを戻したのだと勝手に思っているのだけれど、やっぱりリバーダンスは彼女にぴったりで大好き。
 全日本はまだ2度目だけれどやっぱり独特な雰囲気があって、一人ひとり背負っているものが違っていて、見ているこちらも泣いたり笑ったり手拍子したり立ったり座ったり感情が忙しかった。今シーズンでこんなに胃が痛いのに、五輪代表がかかった来シーズンの全日本はどうなってしまうのだろう。せめてチケットの心配はしたくないので、たまアリでやっていただきたい。


 2016年は、前々から見てみたいと思っていたものをあれこれ見に行けて充実していたと思う。とりあえず今年は既に苗場ライビュとソウルルネッサンスが決まっているので楽しみ。目標としては、舞台「それいゆ」と及川光博さんのコンサートに行ってみたいと思っているところです。

*1:そしてその涙はエリカの登場ですっこんでしまった

*2:だって推しの耳に別の推しの歌声が入ってるんですよ、すごくないですか

*3:ショーで滑る姿を見たり、拍手を送ることがいかに贅沢で幸せなことか、分かってはいるつもり

*4:梨花ホールスピッツ見るのは3回目だけど、毎回このエピソードを話している

神様の箱庭で・「Ave Maria」雑感

 「この機会のために用意した作品」という魔法の言葉に乗せられて、ジャパンオープン観戦のために、さいたまスーパーアリーナへ行ってきた。
 メインの試合よりもゲストのことを先に書くなんて我ながらどうかと思うけれど、テレビ放送がある10月9日までに書きたいと思ったので許してほしい。多分、いつにも増して気色の悪い文章になると思う。試合も大変素晴らしい時間となったので、追々書きたい。

 あの日は、とにかく町田さんの演技を見るのが怖かった。町田さんが特別な何かを用意している──何度も「全日本を見に来てほしい」と繰り返していた2年前を思い出し、胸が騒ぐのだ。もしかすると、今日が最後かもしれない。変な予感が胸の内にあった。
 考えすぎだと言われればそれまでだが、彼の本業が大学院生である今、「いつ私たちの前から姿を消してもおかしくない」という寂しさがチラつくのだ。だから毎回毎回「これが最後でも悔いが残らぬように」と心に決めて演技を見ている。それでもあの日は怖くてたまらなくて、曲が始まるまで顔を伏せていた。 

 音楽が静かに始まって、恐る恐る顔を上げたけれど、町田さんはリンクにいなかった。照明もついていない。客席に戸惑いが広がっていく。スケーターがリンクとバックステージを行き来する階段にスポットライトが当たったかと思うと、町田さんはPIWのオープニングで纏っていた黒い衣装で現れた。既存のリメイクではなく、新しいプログラムだ。そう悟った客席から、アリーナいっぱいに拍手が鳴り響く。そして、それとは異なる優しいさざ波のような拍手が遅れて聞こえてきた。今回はライブ盤の音楽を使っているらしく、録音された拍手もそのまま消していなかったのだ。最初は本当に波の音が入っているのかと思った。
 トランペットのアヴェマリアに乗せて、町田さんはひと蹴りひと蹴りの動きで魅せていく。一番の盛り上がりは、終盤のロングトーンに合わせた長い長いアラベスク。さっき拍手の音を波に喩えたけれど、穏やかな海をすーっと横切っていく一隻の船のような、静かなハイライトだった。最後は澄んだブルーのスポットライトと、その中心から少し外れた位置での祈るようなランジで締めくくられた*1
 「継ぐ者」「あなたに逢いたくて」に対して、この「アヴェマリア」は少し違う感覚で見ていた。今までの作品は、滑っている町田さんから同心円状に会場を支配する力が広がっていくイメージだったが、今回はさいたまスーパーアリーナの天井の方から、もっと大きな見えない力が働いているようだった。うまく言葉で表せないのだけれど、神様が、30m×60mの箱庭で、町田樹という人間を滑らせて遊んでいるような。町田さんと私たちのやりとりではなく、神様と町田さんの対話を端から見ているような。選曲が選曲だし、新横浜や東伏見よりずっと大きな会場で見ていたのも作用していると思う。

 演技の途中から「あれ、そういえばジャンプを跳んでいない」と気がついた。「ジャンプが無くても魅せられるプログラムを作ろうとしたのかな」と思っていたけれど、解説を読んで、それは町田さんの意図と少しズレているように感じた。私が今まで無意識に抱いていた「ジャンプを抜いて、その分をスケーティングスキル・スピン・ステップで補う」という感覚ではなく、「そもそもこの曲(と照明)には、ジャンプを入れる必要がない」という考え方だった。
 フィギュアスケートを見るようになって日が浅い私にも、強く印象に残っているジャンプ無しのプログラムは幾つかある*2。しかし、時にそれらには「ジャンプが無くても……」という枕詞がついていた。私も今まで、それに疑問を抱いたことが無かった。だから、そういうズレが生まれたのだろう。
 2014年の全日本前に放送されたインタビューで「ジャンプのためにプログラムがあるんじゃない、プログラムのためにジャンプがある」と話していたのを今でも思い出す。私はそれを「ジャンプにも意味を持たせてプログラムに入れている」というふうにしか受け止めていなかった。町田さんが競技のルールから離れた今、あの言葉には「ジャンプもあくまで表現手段のひとつに過ぎない」と続くのだろうか。必要とあらば6種類すべてのジャンプを入れてしまうし、必要ないなら、それまでなのだ。そういう意味では「継ぐ者」と「アヴェマリア」は対になっているのかもしれない*3
 解説の結びにあった「祈り」は、昨今の構成の難化に対して一石投じたいとか、ジャンプの成否ばかりに注目が集まる報道姿勢に警鐘を鳴らすといった、ジャンプ至上主義への反骨精神とは、おそらく少し違う*4。「とっておきのプログラムを作ったので披露します、ちょっと違うかもしれないけれど面白いでしょ」という、誤解を恐れずに言えば彼の無邪気さではないだろうか。引退後の作品群はどれも綿密に練られ、丁寧な解説がつけられ、新しい発表がある度にファンは謎解きをするようにプログラムを楽しむ。でも難しそうに見える作品群の根底には、至極シンプルでまっすぐな想いが共通してあるのだと、今回強く感じた。

 少し話が逸れるが、町田さんが引退して間もない頃、ツイッターにあれこれと書くことさえ躊躇ってしまう時期があった。これからは違う道へ進むのだし、メディアの前にも出てこないだろうし、そっとしておくのが一番いいんじゃないか。ちょっとしたことが迷惑になるのではないか。そんな葛藤をしながら毎日を過ごしていた。応援しててもいいのだろうか、と。ショーで定期的に姿を見せてくれるようになった今でも、時折そんな考えが頭を掠める。我ながら面倒くさいファンだなと思う。今回のアヴェマリアを見て、解説を読んで、その葛藤から少しだけ解放された気がした。とても都合のいい解釈だけれど、赦しというか、せめて祈ってもいいのかなと思えた。
 神様仏様マリア様、こいねがわくは、大海原へ漕ぎ出していく彼の旅が明るいものでありますように、どうかお護りください。遠くの街から、私は祈り続ける。



*1:もっと詳しく書けよと言われそうだけど登場の仕方が衝撃すぎて色々吹っ飛んでしまった

*2:ルール上ジャンプエレメンツがないカテゴリもあるけれど、ここではシングルの話として

*3:どちらもシューベルトだし

*4:彼に反骨精神が無いとは思わないけれど

チケットの一般発売でかなり消耗したけどいろいろと考えてしまった話

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 竹内佐千子さんのマンガが好きで、このWEB連載「2DK」も毎回楽しみにしていた。「2DK」は、若手俳優のおっかけをしている女性2人がルームシェアをする物語だ。何かしらのジャンルを追っかけている人には共感できるポイントが盛りだくさんなので、是非読んでみてほしい。
 この第130話「本気」のエピソードを思い出しながら、私はロッピー前に立っていた。スピッツの一般発売に挑むために。

 スピッツはいわゆる「チケットが取れないバンド」だ。びっくりするくらい取れない。
 彼らの意向で、ツアーはアリーナではなくホールを主としている。はっきり言って、人気と会場のキャパが釣り合っていない*1。都市圏の公演ともなると、ファンクラブ先行もダメ元に近い。
 私は地方住まいなのもあり、以前はファンクラブの先行予約でチケットを押さえていた。会員更新を忘れていた「小さな生き物ツアー」も、モバイル有料会員になることで何とか事なきを得た。ところがどっこい、今回はそのモバイル先行予約すら忘れていたのだ。この時点で9割5分詰んでいる。ローチケの抽選先行はもちろん落選し、協賛である地元テレビ局やFM局の番組限定予約も参加できなかった。残された道は一般発売のみ。ほぼ負け戦と言っていい。

 そして冒頭に戻る。私は片田舎のローソンで、午前10時を待っていた。お店の方には長居して申し訳ないと思いつつも、ロッピー前で突っ立っていた。別の店舗でも姉がロッピー前で待機しており、今回は県外の友人にも協力をお願いした。(その節は本当にありがとうございました)
 ポンタカードを手元に用意し、ロッピーの画面にはLコードを入力しておく。10時の時報とともに、右下の「次へ」を押すイメージを、何度も繰り返した。一発目が勝負だ。ここで「ただいま混み合っております」などとメッセージが出ようものなら、そこで終わり。WEBでの申込みは最初から捨て、スマートフォン時報を聞きながらそのときを待った。117をダイヤルしたのなんて何年振りだろう。

 これだけ必死に準備していながら、私は「どうせ取れないだろうな」「空売りかもしれない」と思っていた。さっき書いた通りスピッツのチケットは秒単位で売り切れるし、人気公演のチケットを一般で取れた経験は数えるほどしかない*2。百戦錬磨のロッピー使いたちや、ダフ屋のちょっとアレな手口には勝てないと思っていた。
 なので、一発で次の画面に繋がったとき、何が起こっているのか分からず、一瞬手が止まってしまった。心のどこかで諦めていると、いざ繋がったときに身体が硬直して動けなくなる。アスリートが、あれだけメンタルトレーニングとやイメージトレーニングに取り組んでいる理由が、やっと分かった*3。画面にはすでに「残りわずか」の文字。この一瞬の躊躇いが命取りだ。私は我に返って、急いで日にちを選び、枚数を入力し、ポンタカードを読み込ませた。電話番号と誕生日を打ち込んで、何回も出てくる「この内容で合ってるよな?手数料かかるけどいいよな?」というロッピーの念押しに耐えた。傍から見れば、たぶん1分もかからなかったと思う。
 長いレシートがじりじりとロッピーから吐き出される。私はその様をぼんやりと眺めていた。全身の力が抜けていく。

 やった。やりやがった、私。取ってしまった。

 姉に「取れた」と連絡をし、友人たちにお礼のメッセージを入れ、ふらふらとレジへ向かった。私は完全にハイになっており、手が震え、挙動もおかしくなっていたので、店員さんに苦笑いされた。チケットを発券し、コロッケを買って帰った。
 席は一番上の階、かなり後ろの列だった。それでも一向にかまわなかった。その場にいられること、スピッツの音楽に生で触れられることが何よりうれしかった。結局その日はそれだけで疲れてしまい、家でごろごろして休日が終わった。

 今回一般発売にあたって、前もってネットであれこれ検索していた。開始前にLコードを入れておくこと。ポンタカードを準備しておくこと。実際にやってみて他に気づいたことは、「練習」と「心を強く持つこと」だった。
 馬鹿みたいな話だが、一般発売の数日前、別の公演のLコードを利用して「ロッピーを使う練習」をした。最後の確定ボタンを押す手前までの流れを確認するために。自分のポンタカードに住所と名前が登録されていなければそこで分かるし、本番前に準備が出来る*4。今思えば、「なるべく早く手続きをする練習」もしておけばよかったなあと思う*5
 「心を強く持つこと」については先述のとおりである。「なんだよ精神論かよ…」と言われそうだが、実際にネットや電話が繋がったとき(うまくいったとき)、びっくりして身体が動かなくなった。どれだけ練習やイメトレをしていようとも、この一瞬がタッチの差になる可能性は大いにある。言霊の力は侮れないので、「行ける」「取れる」と口にするように日頃から心がけていたけれど、その一方で「でもどうせ取れないだろうな」と思っていた。ここが甘かった。「強い気持ちを持つ」というのは、ことをうまく運ぶためのものではなかった。本当にうまくいったときに、弱い自分が顔を出さないためのものだった。

 まさかチケットの一般発売のことを書いていたら自己啓発本みたいな内容になるとは思わなかった。でも本当にそう感じたので、今後また一般発売まで追い込まれたときのために、書き残しておこうと思った。
 そしてなにより、先行予約のありがたみを改めて思い知った。当たり前のことだが、先行予約で押さえられるものならば、それが一番いい。ファンクラブもそうだし、地元公演なら協賛テレビ局・ラジオ局・地元紙の先行予約をもっと入念にチェックすべきだった。今後は一般発売でこんなに消耗せずに済むよう取り組んでいかねばなるまい。先行予約最高!

 

 

 

*1:メジャーデビューは1991年だが、初の単独アリーナ公演が行われたのは2009年。今年のロックロックこんにちは!@大阪城ホールなど、イベントには大きな会場がちょこちょこ使われている

*2:一番興奮したのは、ファンクラブ先行でも取れなかったFORFIVEツアー明石公演をイープラス一般で取ったとき

*3:こんなことで比べるなんて失礼極まりないと重々承知の上で

*4:登録されていないまま一般発売に挑むと、ロッピーで名前や住所を手打ち入力しないといけなくなり、大幅なタイムロスになる

*5:もちろん、店員さんやロッピーを使いたい他の方の迷惑にならないように…